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2013-02-16 (Sat)
算数が得意な子の脳は、どこが違うのか?
プレジデントファミリー 2月16日(土)9時0分配信


問題を解くのに必要な「回路」ができあがれば、あとはそれを何度も使うことで、スムーズに解答にたどり着けるようになる。
スラスラと問題が解ける子の脳の中は、いつまでたっても答えが出ない子とどう違うのか。「解ける子の脳」になるための秘訣を、脳のスペシャリストに聞いた。

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■問題を解くとき、脳の複数の箇所が稼働

 世の中には、幼くして方程式が解けたり、微分積分を理解できたりするスーパーキッズがいるという。一方で「数字を見るだけで頭が痛くなる」というような算数嫌いの子も存在する。算数ができる子とできない子は何が違うのだろう。そもそも生まれつき脳に差があるのだろうか。MRIによる脳画像分析のスペシャリストで「脳の学校」代表の加藤俊徳氏に、その違いを聞いてみた。

「算数ができるかできないかは、生まれつきの能力の差ではありません。訓練すれば誰でもできるようになるのです」と言う加藤氏。「うちの子は算数ができない」と嘆いている親にとっては朗報だが、ではいったいどこで差がつくのだろうか。
「ポイントは、脳の中に問題を解く回路ができているか、そしてそれが太いかどうかです」
 加藤氏はまず、算数や数学の問題を解く際に脳の中でどんなことが起こっているかを説明してくれた。

「算数の問題を解く際には、脳の複数の箇所を使います。脳には大きく分けて、前頭葉、後頭葉、頭頂葉、側頭葉がありますが、それぞれ、運動、視覚、聴覚、記憶など人間が生きていくうえでのさまざまな活動をつかさどっています。脳の中にも、いわゆる『役割』というものがあるのですが、現在の研究では、算数や数学のいろいろな問題を解くときに、脳のどの箇所を使っている、と特定はされていません」
 たとえば国語が得意なら、言語や感情をつかさどる部分、美術が得意なら視覚をつかさどる部分を主に使う、というようにある程度特定できるが、算数や数学の場合は、そうではないらしい。
「脳の損傷研究でわかっているのは、脳のどこが壊れても、ちょっとずつ算数や数学の能力が下がるということ。つまり、算数や数学の問題を解く際には、脳の複数の部分を同時に働かせていると考えられます」

 そこで加藤氏は、二つの脳の図を描いて説明してくれた。
「Aが、悩んでいるとき、Bが楽に解けるときの脳のイメージです。初めて問題が出されたとき、脳の中ではああでもない、こうでもないと思考がさまざまな箇所を巡って答えを導き出そうとします。これがAの脳」
 問題を解くためにはどの部分を使えばいいかまだ絞り切れていない状態です。
「一方で、楽に解けるときの脳では、脳のどの箇所をどの順番で使えばいいかが特定されています。そのルートが出来上がっているので、Bの図のようにスムーズに思考回路がつながって、解答が出せるのです」
 なるほど。これが先ほどの「問題を解く回路」というわけだ。


■何度も解くと簡単に解ける理由

「解けない問題が解けたとき、カチッと何かがはまったような感じがして、すっきりした経験があるでしょう。これが、回路がつながった瞬間なのです」
 一度解いた問題をもう一度解いたときに簡単に感じられたり、前より短時間で解けたりするのは、この回路が出来上がっているからなのだ。Bの脳では、脳に負担がかかっていないクールな状態。脳は無駄なエネルギーを使わなくて済むのである。一方で、Aでは脳の中で思考の試行錯誤が行われているので、かなりの興奮状態だ。
「問題が解けなくてどうしていいかわからない、頭の中がふわ~っとなるような感じが、まさしくAの状態なのです」

 この回路を専門的に説明すると、神経細胞同士がネットワークを形成していくということ。約千億個以上の神経細胞がある脳は、細胞同士が集まって思考の中枢となっている神経細胞と、その神経をつなぐ連絡線維の二つで構成されている。脳が適切な刺激を与えられてさまざまな情報を吸収していくと、それまで未発達だった神経細胞と連絡線維は、樹木の枝が伸びるように他の細胞とつながっていく。使われることで回路は太くなり、より楽に問題を解けるようになる。

「必要な脳の箇所同士が連携して回路が太くなると、問題を解く際に二つのいいことが起こります」
 と加藤氏。ひとつは、「応用が利く」ことだという。
「ある問題を解く回路が確立できれば、それに類似した問題が出された際に、おおよそどこの箇所を使えばいいかが推測できます。基本の回路ができているので、そこからちょっとはずれるだけでいい。新しい問題に出合って、まったく知らない問題を解くときに試行錯誤するのとはわけが違います」


■パッと問題が解けるのは集中している証拠

 もうひとつが「集中力の向上」だ。
「回路がつながっていない頃や、つながりたての頃は、回路をつなぐパイプが細い状態。短時間で情報を運ぶことができないため、なかなか解答にたどり着けず、問題を解こうとする気持ちが散漫になりやすい。しかし回路を繰り返し使うことでパイプが太くなると、一気に多くの情報処理が可能になり、集中して問題を解くことができます」

 それではわが子もこの回路を強化していけば、スーパーキッズのようになれるのか。
 しかし、「この回路を強化するのが難しい」と加藤氏。それは、脳のある性質が関係している。
「脳は、ある回路を通って心地よいと感じたら、もう一度同じ回路を通ろうとします。でも、嫌だと思ったら二度と同じ道を通りたがらないんです」

 問題が解けるというような成功体験は脳にとって気持ちよいものであり、もう一度同じ道を通ろうとする。しかし、同じ「解ける」でも、その子のレベルに合っていないものを無理にやらせたり、お母さんから「この問題を解けるまで遊びに行っちゃダメよ!」なんて言われながら嫌々解いた場合には、たとえ解くことができても、脳にとっては苦い印象を与えてしまうのだ。
「誰かとご飯を食べて楽しかったら、また一緒に食べたいと思うでしょう。それと同じ法則が脳の回路にも当てはまるのです」

 脳の回路を強化するには、何度も同じルートを通ることが必要。そのルートを何度も通らせることができるかどうかが、優秀な子とそうでない子の分かれ目だというわけだ。子供が「楽しい」と思うような環境づくりをすることが、解ける回路をつくる第一歩かもしれない。
 算数や数学ができるようになる脳の仕組みがわかったところで、「回路をつくったり、強化する際にやってほしいことがある」と加藤氏。


■頭の中だけで考えても答えが出ないなら……

「それは、手を使うことです」
 答えがわからないときは、脳のどこを使えばいいか迷っている状態。その際に、頭の中だけで考えるより、指を折って数えたり、図に描いたり、式に起こしたりすることが大事だという。
「解けないときには、思考が脳の同じ箇所だけをグルグルと回っていることもあります。そのときに手を動かせば、思考を違う箇所に動かすことができるのです」
 算数ができる子は、わかっていることをすべて書き込んだり、文章を図示化したりする。これは、脳にも刺激を与えているというわけだ。


■答えがどこで間違ったかを把握させよう

 最後に、算数で育まれる力について一言。
「人間は生まれると『周りの人はこうしている』とまず他人を認識し、その後だんだん『自分はどうなのか』と、自分を確かめるようになります。算数で一番育まれるのは、前頭葉で発達するこの自己認識能力だと思います」
 算数には必ず答えがある。問題を間違えた場合、自分がどこで誤ったかというプロセスを計算式の中で確認できる。それを認められる子は、どんどん成長していける。
「答えが間違ったという事実だけを意識する子は、それ以上先へ進めません」
 算数で間違いを把握する作業は、自己認識能力につながるものなのだ。
「親は、子供が算数の問題で間違えた際に、どこでどんな間違いをしたかを子供自身が把握しているかにも気を付けたいところです。問題が解ける、解けないで一喜一憂することよりも、この問題を通して、子供の自己認識能力が成長しているんだ、と考えてみてはいかがでしょうか」


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加藤俊徳●Toshinori Kato
医師、医学博士。「脳の学校」代表。国立精神・神経センター、ミネソタ大学放射線科などを経て現職。これまで、1万人以上の脳画像を分析してきた。著書に『脳の強化書』(あさ出版)など。

鈴木 工=文
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20130216-00000001-pfamily-soci
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